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〜紙の匂いに誘われて〜神保町の本屋と喫茶店巡り

〜紙の匂いに誘われて〜神保町の本屋と喫茶店巡り

ちょっと大人な趣味として読書はいかがでしょう。お気に入りの本を静かな喫茶店で読み耽るのは、季節を問わずいいものです。ここでは多くの書店が軒を連ねる神保町の古書店と喫茶店をセットで紹介いたします。

コンテンツ溢れるいま、再注目したい“紙の本”

「エンタメと言えばテレビ」という時代はとっくの昔に過ぎ去り、ゲームにYou Tube、マンガアプリ、動画サブスクリプション(Netflix、Huluなど)にTik Tokと、令和はさまざまなコンテンツが可処分時間を奪い合う時代となっています。

そんないま改めて注目したいのが本。それも電子書籍ではなく紙の本。本を手に取りページをめくるという行為は、例に挙げたコンテンツとは一味違った時間の流れを楽しめる素敵な趣味と言えるでしょう。

小説であれば独自の世界に浸り、ビジネス書であれば気づきや学びを得ることができる。近年、本もECサイトで購入する人は増えていますが、改めて本屋でお気に入りの一冊を選んでみるのもいいものです。

そこで今回は本の街として知られる神保町を紹介いたします。街歩きをしながら選んだ本を、これまたゆっくり静かな雰囲気の喫茶店で読み耽るという、大人な趣味活を楽しんでみませんか? 

レベル1:神保町デビューは近場の定番店から

「いきなり本格的な古書店に踏み込むのはちょっとなあ…」というあなたには、総合書店から攻めてみることをおすすめします。フロアごとにジャンルが分かれ、品揃えも豊富な総合書店は、お気に入りの一冊が見つかる可能性も高いです。さらに、喫茶店は移転したばかりの老舗の名店をご用意しました。

書泉グランデ

昭和23年創業の書店「書泉」の本店がこちら。神保町駅から徒歩2分程度で行けるアクセスのよさもあり神保町入門にはピッタリ。とはいえ、鉄道・バス、アイドル、プロレス、コミック・ラノベや占いなど趣味系のジャンルではその道の達人からも高い評価の品揃え。ディープな香りも存分に堪能できるはず。

多彩な本を眺めるのも楽しいですが、店舗脇の展望エレベーターもぜひご利用を。最上階からは神保町エリアを一望できることもあり、隠れたおすすめスポットなのです。

名称書泉グランデ
営業時間11:00~20:00
休日1/1(元日)のみ
住所東京都千代田区神田神保町1-3-2

ミロンガ ヌオーバ

書泉グランデ左手の路地を入ってすぐのところに神保町屈指の名店が…! 2023年2月からは数10メートル先に移転した新店舗で営業中です。店名の「ミロンガ」はタンゴのようなアルゼンチンの音楽ジャンルのことですが、新店舗でもレコードから流れる音楽はやっぱりミロンガ。

新店舗のテーブルやカウンターに旧店舗の木材が使われたり、メニューも継承されたりと、魂はしっかりと継承されています。かねてからのファンもきっと満足いただけるはず。

神保町の純喫茶らしくミロンガでもコーヒーは自家焙煎。まずはこの香り豊かなコーヒーと、流れる”ミロンガ”に身を委ねて神保町の雰囲気を楽しみましょう。

名称ミロンガ ヌォーバ
営業時間11:30〜22:30(土日祝〜19:00)
休日水曜日
住所要確認

レベル2:カルチャー系書店と変化球カフェを攻めてみる

神保町の空気にも慣れてきたという人や、デザイン系のお仕事をされている人、はたまたちょっとオシャレな雰囲気を楽しみたいという人にはこのコースがおすすめ。ここではファッションやエンタメ、建築系を揃えた書店をセレクトし、休憩は洗練されたティースペースをピックアップ。

矢口書店

靖国通り沿いの古書店のなかでも一際歴史を感じる佇まいは伊達じゃありません。創業(1918年)から100年以上を数えるこちらは映画・演劇・演芸・戯曲・シナリオの専門古書店。店内の品揃えや雰囲気からは「サブカルチャー」というよりは「芸能文化」の側面を強く感じられるのではないでしょうか。

名称矢口書店
営業時間月~土:10:30~18:30
日・祝:11:30~17:30
休日不定休
住所東京都千代田区神田神保町 2-5-1

小宮山書店

80年以上続く古書店ながら、現代にも通じるスタイリッシュさも纏う小宮山書店。日本のカルチャー発信を目指すこちらでは、写真家のアート系写真集、雑誌やポップカルチャー系アート作品やポスターなどを中心にセレクト。センスをビビビと刺激してくれるような書籍、作品の数々にゆっくりと浸かってみてください。あ、ビルに描かれた大きなグラフィティーは、もちろんアート作品ですよ。

紙の作品だけでなくトイ、フィギュア、グッズ系も充実。フロア数も多く、上から下までしっかり見て回ると意外に時間を使ってしまう書店さんです。

名称小宮山書店
営業時間月〜土 12:00-18:30
日曜・祝日 12:00-17:30
休日火・水曜日
住所東京都千代田区神田神保町1-7

magnif

「雑誌」がメインの古書店。なるほどたしかに、どんどん新しい号が発売される雑誌のバックナンバーは「古書店」という形式と相性がいい。細長い店内には所狭しと国内外のファッション雑誌が並べられています。手にとってページをめくればトレンド遍歴だけでなく、そのときの起用タレントからも歴史の流れを感じられるはず。

アメリカのフォトグラフ雑誌『LIFE』のバックナンバーも大量に。切り取られたその時代のリアルやトレンドが、ものによっては驚くほど安価に入手できてしまうのです。

名称magnif(マグニフ)
営業時間12:00~18:00(時短営業中)
休日不定休
住所東京都千代田区神田神保町1-17

ボヘミアンズ・ギルド

大型書店『東京堂書店ふくろう店』のお隣に位置するのがこちら。店外の書棚を足を止めて眺める人も多く、ビビッと刺さる美術系の本(画集、図録、評論など)を中心にセレクトされています。2階はギャラリースペースになっており、展示された絵画や版画などを眺めながら座ってゆっくり本を読むのも◎。

店外書棚にグッと寄ってみると……、バラバラとしたセレクトながら文化の香りがプンプン。足を止めて眺める人が多いのも頷けます。

名称ボヘミアンズギルド
営業時間12:00~18:00
休日年中無休
住所東京都千代田区神田神保町1−1 木下ビル1F・2F

BRITANNIA TEA

2022年11月にオープンしたばかりのこちらは、神保町に多い純喫茶タイプではなく洗練されたティーカフェスタイル。紅茶を中心としたメニュー展開なので、文字通り足を休めてティーブレイクを楽しみましょう。2階は大きな丸テーブルのイートインスペースで3、4階は個室ブースもあるコワーキングスペース。どのフロアにも電源、Wi-Fi完備のため、読書だけでなく作業場所としても◎。

2階のイートインスペース。壁面には『ドラゴンクエスト』の生みの親、堀井雄二氏のサインも。

紅茶は世界の三大紅茶といわれるダージリン、ウバ、キーマンを中心にフレーバーティーなども取り揃える多種多彩なラインナップ。

名称BRITANNIA TEA
営業時間7:30〜21:30
休日要確認
住所東京都千代田区神田神保町1丁目1

ちょっと小休止……(明日使える小ネタ)

神保町界隈の書店数は約200軒。そのうち古書店が約170軒となっており、やはりここは古本屋の街であることは間違いないのです。さて、あなたが神保町に興味を持って訪れたとき、勘のいいかたなら違和感を持つはずです。「なんか、“こっち側”に集中してない?」と。

そうなんです、古くからある書店の多くは靖国通りの南側で北向きに店を構えているのです。ご想像できる人もいるかもしれませんが、これは日中の直射日光を避けるというのが理由なのだそう。あなたが神保町ビギナーさんを連れてまわるときには、ぜひこちらの小ネタをご活用くださいませ。

レベル3:ディープスポットにどっぷり浸かる

神保町散策も3ステップ目は一気にディープに。文学性の高いお店とさまざまな文化の入り混じった集合書店をミックスしたコースをご用意しました。ふつうの書店ではお目にかかることのできない国内外の歴史的一品に触れられる書店を堪能したあとは、神保町喫茶店の老舗でごゆっくりお過ごしください。

神田古書センター

昭和50年代にオープンした『神田古書センター』。その名の通り、各階に古書店が入る神保町のシンボルのようなビルも少し様変わりし、引き続き書店をベースにしながらも多種多様な文化と出会える場所になりました。とはいえ、明治の時代から続く老舗書店『高山本店』が1階にドンと構えるあたりは、この場所が時代を超えて象徴として存在している証です。

古書店がズラリと並ぶ中、2階にはカレーの名店『ボンディ』も居を構えます。店内で落語イベントを開催する『らくごカフェ』や、ビンテージレコードの名店『富士レコード社』など本以外の文化も一気に楽しめるビルなのです。

名称神田古書センター
営業時間10:00〜18:00
休日不定休
住所東京都千代田区神田神保町2丁目3

田村書店

さきほど紹介した『矢口書店』と似た雰囲気の、“THE古書店”という佇まいの『田村書店』。創業は1904年と明治末期。16〜20世紀の仏・独文学系から、西洋古典、哲学、言語など多種多彩なジャンルの原書専門店です。大きな店舗ではありませんが、店内は壁面から階段までびっしりと書棚が設置され、隙間なく本が詰まっています。この雰囲気に圧倒されるのも神保町古書店めぐりの醍醐味のひとつですよ。

まるで御札のような黄色のラベルはすべて値札です。

名称田村書店
営業時間10:00〜18:30
休日日曜日
住所東京都千代田区神田神保町1-7-1

神田伯剌西爾

大トリは神保町純喫茶の大本命『茶房 神田伯剌西爾(かんだぶらじる)』。佇まい、暖簾、看板、店内、すべてに“味”を感じられるこちらこそ、今回の神保町散策の締めに相応しいのではないでしょうか。書泉グランデのすぐ側に位置する伯剌西爾は、そのアクセスのしやすさからも、「何はさておき伯剌西爾行くか」になってしまうのです。

床、壁、カウンター、内装すべてがリアルクラシック。なお、伯剌西爾さんは喫煙/禁煙スペースが分かれており、昨今肩身の狭い思いをされている喫煙者にとっても憩いの場所となっているようです。

伯剌西爾では産地の厳選した高品質生豆だけを直火式焙煎機で焙煎しており、香りも味も際立つ美味しさ。スイーツも絶品ですが、筆者イチオシはコニャックショコラ。ガナッシュクリームとバニラクリームの2層+パイ生地のサク感がたまらない…!

名称茶房 神田伯剌西爾
営業時間11:00〜21:00(日祝〜19:00)
休日なし
住所東京都千代田区神田神保町1−7小宮山ビルB1

ここは全身で本を感じられる街

取材で多くの書店を訪問して感じたことは、「本屋、いいなあ」ということ。もう、これに尽きます。筆者はふだん、ほぼ電子書籍一択の読書体験になってしまっているのですが、それでは見つけられない本との出会いや、感じられない“本のよさ”がここにはありました。

ほとんどの本を手にとって読むことができる(いわゆる「立ち読み」ですね)のも神保町エリアの魅力かもしれません。手に感じる本の重さ、ページをめくる感触、紙やインクの匂い、そして目に入ってくる古書特有のシミや折り目ですら、本を全身で感じることができる大事な要素だと気づきました。

うん、やっぱり「本屋、いいなあ」。

ここまで読み進めていただいた皆さんなら、もうどんな書店にも入れるはずです。まだまだディープな神保町のさらなる深淵を覗いてみることをおすすめします。

※ 本記事は2023年2月17日時点の内容です。

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