公開日:2023年10月11日
【東京発日帰り山さんぽ】足柄峠から矢倉岳~関東と西国を結んだ古代の道・足柄道を行く。
西国と関東を結んだ、古代足柄道が通る要衝の地に足柄峠がある。標高は750mほど。旧東海道などよりはるか昔に整備された道で、足柄路などと呼ばれた。歴史は古く、800年頃の富士山の延暦大噴火によって駿河の道が通れなくなったときに、このルートが使われた。
『散歩の達人 日帰り低山さんぽ』より、旅先で気軽に楽しめる散歩コースを紹介。歩行時間や歩行距離も明記しておりますので、週末のお出かけにご活用ください。
<神奈川県 南足柄市・静岡県 小山町>
◆散歩コース◆
体力度:★☆☆
難易度:★☆☆
- 登山シーズン 1月~6月、9月~12月
- 最高地点 870m(矢倉岳)
- 登山開始地点 740m(足柄万葉公園バス停)
- 歩行時間 3時間20分
- 歩行距離 約7.5km
足柄峠にはその後、899年に関所が築かれ、室町時代の初期、1400年頃には足柄城も築かれた。この場所が、よほど重要な地だったということだろう。
丹沢と箱根の間に横たわる足柄山地に属する矢倉岳は、足柄路近くにある。街道を通る旅人を見張る櫓のような形をしていたので、その名がついたといわれる。
大雄山駅からバスで地蔵堂まで入る。普通はそこから足柄古道を登るが、春と秋のシーズンの週末には地蔵堂から上の足柄万葉公園までバスが出るというので、利用することにした。これで約1時間のアドバンテージだ。
バスを降りると、いきなり目の前に富士山の雄姿。贅沢極まりない風景だ。少しも歩いていないのにこの姿とは。ま、ちょっとありがたみがそがれるような気もしないでもない。
バス停から公園内の森を抜けて足柄明神へ寄ることにする。
もとは村の鎮守だったようだが、一時は足柄城の出丸として使われた。ここからは松田町方面と金時山、矢倉岳の眺めがいい。
足柄の関跡を見てから聖天堂、足柄峠へ出て足柄城址に上がる。広場のようなところは城の本丸があったところで、今では絶好の富士山の展望台になっている。
本丸以外にも足柄城址にはかなりの規模の遺構が残っている。本丸の先の北側には、二の曲輪(くるわ) 、三の曲輪、五の曲輪までの4つの曲輪が残っている。時間が許せばぜひ五の曲輪まで足を延ばしてみたい。城跡散策のあとは、車道へ出て万葉公園のほうに引き返し、矢倉岳方面へ向かう。
地蔵堂分岐までは小1時間。平坦でよく整備された道なのでとても歩きやすい。これなら子どもでも平気だろうと思っていたら、本当に子ども連れの家族が前を歩いていた。
矢倉岳山頂から相模湾や富士山まで大パノラマを望む
この清水越を過ぎると勾配は徐々にきつくなり、分岐から20分も登ると矢倉岳の山頂に飛び出す。展望は申し分なく、360度の大パノラマ。相模湾や金時山、富士山と、まるごと目に入る。広い山頂では、子どもたちが元気に跳び回っていた。
下山コースは矢倉沢のバス停に下りるのが一般的だが、今回は来た道を戻って地蔵堂へ向かうことにした。地蔵堂分岐からひたすら下って行くと矢倉沢林道。直進して相ノ川を渡渉し、最後の急坂を上がって地蔵堂バス停へ。
山歩きメモ
一般的には矢倉岳から地蔵堂分岐に戻らずに、矢倉沢バス停に下りる方が楽である。山頂からおよそ1時間半の下り。地蔵堂近くの夕日の滝へは往復1時間程度で行ける。
アドバイス
子どもも歩いているコースなので安全だ。ただし地蔵堂分岐から下る道は急坂なので注意。矢倉沢分岐から沢を越えたあとの直登は、最後の頑張りが必要だ。
足柄城址
足柄古道の通る要衝の場所に築かれた巨大な山城
足柄峠にあった山城で、霞城ともいう。築年は室町時代初期、1400年頃といわれ。天文5年(1536)頃に北条氏綱が隣国の武田氏の侵攻に備えて本格的に整備したようだ。天正18年(1590)、豊臣秀吉による小田原征伐の際に足柄城を守っていた北条氏忠は山中城落城を知って小田原城に退却。城はほどなく落城した。
取材・文=清野編集工房
『散歩の達人 日帰り山さんぽ』より
清野 明
編集者
散歩の達人ムック『日帰り山さんぽ』シリーズ編集長。1994年、幻の雑誌「探険倶楽部」編を立ち上げる(4号で休刊)。『散歩の達人』では創刊の頃から「東京探険倶楽部」を10年近く連載。昨年から「ニッポン面影散歩」を連載中